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嵌ったドラマや映画や役者さんなんかについての果てしない妄想と戯言


by ntonton_9320

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be with you [あなたと一緒に] 26-2

冬の乾いた空気と夕暮れの雑踏の匂い、
忙しく行き交う人々に紛れながら、当麻の歩みに合わせ俺は少しゆっくりと歩いた。
俺の歩みに合わせるようにあいつは少し急いで歩いた。
俺たちは、確かに二人だった。

一瞬、目の前の色彩がズレを生じ混じり合い僅かに色を帯びる。
目の前のショーウィンドウに映った黒と赤、二人は同じ場所を見ていた。

視線がぶつかり合うように当麻と目が合った。
無意識に俺の手が当麻の手を探した。
繋いだ手だけが二人の行く先知っているのだと俺は思った。
だが、ショーウィンドウの扉が開き一瞬にして現実に引き戻される。
歩き出した。何もなかったように。

大通りを抜けたところで一旦立ち止った瀬文が自分を追い越して行こうとする当麻に声を掛けた。

「腹減ったろ。CBCでも行くか?」

想像に反して当麻は直ぐに首をぶんぶんと横に振った。

「行きません」

少し俯いたまま、きっぱりそう告げる。

「どうした? 餃子が嫌か? それとも俺と行くのが嫌なのか?」

「餃子は嫌じゃないです。けど真っ直ぐ家まで送り届けるようにって野々村係長の命令っすから」

「そうか、分かった」

諦めたように瀬文は頷き、野々村の言葉を思い出した。

「そういえば係長から何か預からなかったか?」

「これっすか?」

ポケットに手を入れ、クシャクシャに丸まった小さな紙切れを取り出した。

「おまえ・・・まあ、いい。よこせ」

そこには、何やら地図らしきものと場所を示しているのかハートが一つ書かれていた。

「ちょっと寄り道だ。行くぞ」

「もう、あたしの話し聞いてました?」

「おまえが上司の命令を守ると言うのなら黙って付いて来い、これも係長からの命令だ」

キャリーをひょいと担ごうとしてまだ治りきっていない傷の痛みに小さく呻いた。
それを呆れ顔で見ていた当麻がキャリーを奪い取る。

「どこへ行くんですか、せーぶーみーさん?」

当麻が付いてくるのを確認するように一度だけ振り向いた後、瀬文は再び無言で歩き出した。



瀬文はおよそ似会わない、お洒落な店の前で足を止めると
ボロボロのメモをチラリと確認しておもむろに中に入っていく。

当麻はといえば、そんな瀬文の後ろ姿・・・ではなく、
隣のこれまたお洒落な店の窓から覗くある物に目を奪われていた。

暫くして、大きな包みを抱えて出てきた瀬文はそこで待っているはずの当麻の姿がないことに焦った。

くそっ。どこへ消えた? まさか!
頬が強張るのが自分でも分かった。
頭の後ろに広がり始めていた不安と共に目に前の全てが色を失い、灰色に染まっていく。

「当麻~!」

思わず駈け出そうとしたその時、隣の店から出てきた当麻の姿が目に入った。
キョロキョロと辺りを見渡しながら可愛くラッピングされた紙袋を手にふにゃりと嬉しそうな顔をしている。

「あ、せぶ・・・」

「当麻! 勝手に消えるな!」

瀬文を呼びとめる声より当麻を怒鳴りつけた声の方が大きく、周りの通行人まで振り向いた。

「そんなに怒らなくても。ほら、みんな見てますから」

「頼むから、いなくなるな」

「何すか、それ?」

当麻は心の中心にある温かいものに触れられたようで、わざと乱暴な言葉で返す。

「それじゃあ、今度こそとっとと帰りますよ」

「おい! 待て!」

「あん? なんすか?」

「食糧ぐらい調達させろ」

「あたしなら、大丈夫っす」

「おまえのじゃねぇ。帰っても何もない。
 一ヵ月近くも入院してたんだ、あっても腐ってんだろうが」

「それも、そうっすね」

二人で次に目指したのはスーパーマーケットで、
試食コーナーごとに足が止まりかける当麻にイラつきながらも
楽しそうに食品を見て回る姿に瀬文は片頬を緩めた。
# by ntonton_9320 | 2014-05-06 22:07 | SPEC